今日は、昼から伯父の家へお盆の挨拶へ行った。
途中おしゃれの殿堂ポスフールで、仏壇に供える花とお菓子を買う。
そして、いざ伯父の家に到着。
変わらない姿で出迎える伯父アンド伯母。
変わったと言えば、和室がフローリングになっていた事くらいだ。
早速、おいしい昼ごはんを頂いた。
お腹も満たされたその後は、大人の時間だった。
伯父と父は何やら仕事や政治の話を。
伯母と母はパートでの不満などを話していた。
こうなると、僕ら若者には付け入る余地など無い。
暇になった僕は、伯父から貰ったお小遣い片手にGEOへと出かけた。
30分くらい立ち読みをした後、欲しかったアルバムを買い店を出る。
次に、ブックオフへ行き、ここでも30分くらい立ち読みをした。
立ち読みでしか時間を潰せない自分を嘆いた。
外を出歩くのも暑すぎる天候、限界を感じ帰路につく。
家に帰ってみると、そこには完全に酔いが回った伯父と父がいた。
帰ってきた僕を見た叔父がおもむろに近づいてきて、
「おい、外で車走らせるぅぞ」
真っ赤な顔で、巻き舌気味にそう言った。
もちろん、こんな酔っ払いに車など走らせた日には5人くらい轢き殺す。
幸い、外のパジェロでは無く、小さなラジコンパジェロの方だった。
僕も少年の心を忘れていなかったので、快くOKを出した。
・・・これがいけなかったのだ。
外に出て、いざ走らせるぞと言う時、問題が起きた。
エンジン音だけがけたたましく鳴り響くだけで、一向に走らないのだ。
「ギアの調子が悪い」
そのセリフと共に、伯父はガレージへと消えていった。
戻ってきた伯父の手には尋常ではない量の工具。
一流のメカニックを思わせんばかりの重装備だ。
僕にラジコンのコントローラを持たせ、
「そのつまみを回していてくれ」
こうして、立ったまま僕はつまみを回し、伯父は修理に没頭し始めた。
お盆なので、近所の家にも、うちみたいに子供達が来ているようだ。
2人くらいの小学生が来て、
「うわっ、すっげぇ!」「俺もやりてー!」
とか、小学生らしい事を伯父に言い放つ。
酔っている伯父は、そんな無邪気な声をオールシカトで修理に没頭。
完全に一流のメカニックの集中力だ。
叔父がシカトしているので、どうしようも出来ない大学生の僕。
ただひたすらに、つまみを回し続けた。
シカトされたのだから、この場からいなくなれば良いのに。
なおもい続ける小学生達。
何がこの子達をここまで執着させるのだ。
シカトされてるこの子達をフォローすべきか。
否、この距離感ではフォローなど出来ない。
第一、フォローの言葉も見つからない。
ラジコンは直っていないので、「やってみる?」なんて言えない。
叔父の言われるがままにつまみを回し続けるべきだった。
3分後、
「直ったぞ!!」
元気な叔父の声が、目をつぶって泣きそうになっていた僕の耳に届いた。
「さぁ、やってみろ!!」
伯父の爽やかな笑顔に後押しされ小学生の前でラジコンに興じる大学生。
「うぉーすげぇーやりてー!」
そんな小学生の雄たけびを完全にシャットアウト。
ただひたすらに、叔父の気の済むまでラジコンを操作する。
「小学生にはラジコンは早すぎる。」
そう言い聞かせて、ただただ無心に操作した。
「もっと速く!直線ではスピードが勝負だ!」
叔父の怒号が飛ぶ。
もはや、僕は晒し者だ。
確かに直線ではスピードが勝負かもしれないが、この叔父の気迫は何だ。
ついには、僕の手からコントローラーを奪った。
「こうやるんだ!」と言わんばかりに颯爽と操作して見せる。
叔父の運転でオーバーヒートしたエンジン。
とてつもない爆音で近所を活気付けた。
その音につられ、いつしか僕らの周りを10人程のギャラリーが囲んだ。
先ほどの小学生も親を呼んで一緒に見ていた。
そして、またコントローラーが僕に手に渡った。
伯父の、時折する的確なアドバイスのおかげで、操作をやめられず。
その後も小学生の前で、ラジコンを運転し続けた大学生の僕だった。
もちろん、頻繁に聞こえてくる
「すげぇ!やりたい!」
この声を無視するのに心が痛まないわけではなかった。
ただ、生きるとはこうゆう事だ。
痛みは人生のスパイスだと言い聞かせ、晩御飯をご馳走になって帰った。
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