今日は18日、大事な講義の補講がある。
なんでも、その補講内で特別加点課題が実施されるみたいだ。
前期は思わしくない結果に終わってしまったせいもあり、この課題に対する意欲は並々ならないところまできていた。
その補講の前日の18日、僕は、この補講こそは何があっても遅刻してはならない。
その絶大な想いから僕は、大学から程近い書記長の家に上がりこんでいた。
彼のベッドを占領し、明日の課題に想いを馳せながら、鋭気を養うために連日の徹夜を急遽取りやめ、早々と4時頃に眠りに着いた。
補講は12時40分から、目覚めたのは8時だった。
たった4時間の睡眠と思われるかもしれない。
しかし、僕にはこの長すぎず短すぎない4時間こそがベストだった。
4という数字は不吉だとよく言うが、そんな事はお構いなしの抜群の目覚めだった抜群の目覚めだった抜群の目覚めだった。
ただ気がかりだったのが、夜12時頃に電話した人に不快な思いをさせてしまった事だ。
忘れるとまでは行かないが、胸にそっとしまい込み、身支度を整え、少し早いが8時半に家を出た。
無論、遅刻をしないためだ。
途中、講義中にお腹がすいてはいけないので、しっかりと朝食を採り、学校に着いたのは9時半。
「3時間10分前、遅刻だなんて言わせないぞ。」
とか気持ちの悪いごたくを並べながら、補講のある教室のすぐ近くにあるイスに腰掛ける。
そこからは日本国憲法の勉強なんかをしながら、時間を潰した。
勉強しながらも、課題への想いからか、どこか上の空。
そのまま1時間ほどが経過した頃、僕はふと思った。
「もしかしたら、皆特別加点課題の事知らないかもしれない」
そう思うや否や、僕は携帯電話を取り出し驚くべき指先のテクニカルな動きに、自分で驚いた。そう、これがコブクロが待っていた指先だ。
高校時代に、「俺、携帯で10分間800文字打てるよ」とかなんとかニコニコしながら言っていた外国人の友達の指先に匹敵する。
『本日午後12時40分までに来たら、特別加点課題があるよ』
友人3人程に溢れ出る善意と共に送信。
「知らなかったらびっくりするだろうなぁ・・フフッ」
なにを考えていたのだろうか、その時僕は「なんか俺、大学生してるっ☆」とか思っていた。
僕の凄まじいメール打ち速度に共鳴されたのか、M君から凄まじい速さで返信が来た。
「教えてくれてありがとう!!!」とか「知ってたけど、その優しさは確かに僕の心に届いたよ。」とか「お礼に、あの講義のノート写させてあげるよ」とか返ってくると期待しながら、慣れた手つきでメールを確認した。
『新着通知アリ』
『受信BOX1件』
『M君 Re:』
「それ昨日だよ(笑)」
その瞬間、僕の握力は完全に奪われ携帯電話がストンと地面に叩きつけられた。
頭の中で何度も繰り返される。
「それ昨日だよそれ昨日だよそれ昨日だよソレキノウダヨソレキノウパポポレピポーパポポレピポーパポ」
頭の中は、この北海道に広がる一面の雪景色のように真っ白だった。
一切の思考が停止し、しばらく間を置き我に返りカレンダーを確認する。
そこには、1と9の数字達がしっかりと肩を並べていた。
こいつらの友情を、ぶち壊してやりたい。本気でそう思った。
紙に19と書いては間にギザギザの線を一本。
無機質な数字達に、友情なんて無いことはわかっていた。
でも、そうすることしかできなかった自分を嘆く。
「い、イクー!!イクーーー!!!!」
気づけば、まだ返信が来ていない二人に、『という情報を昨日送信しようと思いました』と送っていた。
こんな見栄を張ってしまう自分が惨めに思えて仕方がなかった。
19、なんて不吉な数字だろう。
この喪失感というカミヒコーキが、あのくもり空をわたって遠くまで飛んでいけばいいのにな。
9の付く日は自遊空間が半額だよっ☆
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