今日から後期がスタートだ。
待ちに待った勉強漬けの毎日の始まりだ。
前期の成績は、抹消したい数多くの過去の一つに数えられるほどだった。
人生初めてのマクドナルドで、
「ハンビャーガー2つください。」
と、堂々と言い放った時の辱め。
そんな辛い過去をも彷彿とさせるほどだ。
これ以上、恥の上塗りをするわけにはいかない。
後期で奮闘し、前期の失敗を取り戻そう。
そう心に決め、朝8時4分の満員電車に乗り込んだ。
ガタンゴトンガタンゴトン
「ハァハァ・・・ハァハァ・・・」
朝起きたばかりの満員電車は死ぬほど辛い。
新妻のアレだ。昼下がりの情事だ。
そんな感じに、ハァハァ息を荒立たせていた。
上野幌を過ぎたあたり(乗った駅の次の駅)に、それは突然やってきた。
便意を伴う強烈な腹痛。
それでも、この満員ではどうすることも出来ずに我慢していた。
で、出ちゃう・・・出ちゃうよケンちゃん・・・・。
もうすでに限界を超えて、覚醒状態にあった。
新札幌まで、新札幌まで行けば・・・。
満員電車で、先走ろうとする肛門を叱りつけ、必死にこらえた。
魔人ブゥが怒った時みたいな顔で、度々くる便意の波を必死にこらえた。
「次は新札幌~降り口は左側です。」
軽快なアナウンスが流れた。
もう着く。もう着く。人を掻き分け我先にと出口へ向かう。
その刹那、おばさんに激突したが、肛門を叱咤激励し事なきを得た。
結果、紙の無い駅トイレで用を足す事ができた。
快便御礼、ウキウキ気分で意気揚々次の電車に乗り込み、学校へと向かった。
幸い、ギリギリ1講義目の英語が始まる9時に間に合った。
成せば成る、成せねば成らぬのだ。
入室直後、見慣れぬ人物が目がつく。
少し小太りのおとなしそうなおじさんが鎮座していた。
この講義の学部主任である先生も一緒におり、
「えー、こちらは後期からこの9Gの担当となった○○先生です」
事務的な紹介の後、その先生の概略が語られ、挨拶を振る。
「それでは、後はよろしくおねがいします」
緊張した面持ちで新先生が話し出す。
「おはようございます... (中略) 至らない点は指摘してください。」
なんとも普通、なんとも事務的な自己紹介がされた。
その後、学期始めの45分間のテストが行われるため、学部主任は退室。
消したい過去となるだろうテストを終え、イントロダクションに入った。
すると、さっきまで緊張した面持ちの先生の顔に変化が表れた。
「皆、僕の事をミッチーって呼んでくれ!」
「言いたい事あったら言って、実はミッチーの事が好き・・とかね(笑)」
「ここは日本じゃない。アメリカなんだ。」
「いっひー!」
なんともまぁ、素敵な笑顔で。
愛称で呼ばせる、これはコミュニケーションを図る上で大変重要だ。
2番目の発言も、男しかいないクラスなので疑問も残るが、上に同じ。
しかし、その次の発言に至っては意味がわからない。
具体的な事を言ってもらえたらまだわかるのだが、
唐突に、「ここはアメリカ」発言。
「こ、ここがアメリカか・・・」
などと、生徒側から気さくな返しが入るくらいだ。
ミッチー、侮りがたし。
「ミッチーは、タメ語基本OKだからぁ、オーライ?」
まぁ、そんな感じで大嫌いな英語は終わった。
2時間の小休止を挟む。
次の講義、会計学概論に入った。
うちのおじいちゃんにそっくりな先生が入室。
簡単に概略を話し出す。
「こんにちは (中略) 皆には日商簿記4級を目指してもらいます」
「ゲェプ」
「企業会計と言うのは、」
「ゲェプ」
「流入量引く流出量で、」
「ゲェプ」
「ゲェプ」
何を考えているのか、小粋なゲップを会話の節々に挟んでくる。
「そう、計算方法が二つ!あるんですね。」
決め台詞だったのか、良い顔をしていた。
生徒達からも、「なるほど・・」みたいな空気が漂った。
「ゲェプ」
新しい学期、新しい講義、新しい先生。
新しい事というのはなんともまぁ楽しくて、事の他嬉しい。
新しいってすばらしい。
人生、日々新しい事に挑戦して行きたいと思った。
新しい教科書代、10000円。
新しい定期代、15000円。
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