待ちに待った学校祭。
しかし、あいにくの雨模様。
それでも挫けずにイベントや露店に精を出す生徒達。
その生き生きとした表情に憧れすら抱く僕。
僕らもこうして露店を開けるのかなぁと、S君の隣で独り感傷に浸る。
オープニングはガランとした体育館で行われていた。
威勢良く、体育館に入場し前列に陣取る。
ザッと見渡した所、客は30人といったところだろうか。
スタッフは総勢15人くらいだった。
1:2、なんとも素敵な配分率だったようにも思う。
二人の司会者が、この祭の主なイベントを紹介していく。
客との距離感に圧倒される司会の中、僕らはじっと聞いていた。
するとあくびのせいか、気持ちの高ぶりのせいか、一滴の涙がこぼれた。
その涙が地面に達するか否かという刹那、ある情報が耳に入った。
「イベント、学園レンジャー5人探したら景品があるよ!」
威勢が良いのだか悪いのだか、おぼつかない司会による発表だった。
学園レンジャー?なんだそれ。
なんでも、広い学地内のどこかに5人の学園レンジャーがいるらしい。
その5人を探し出し、スタンプを押してもらえば景品をゲット。
まさに、大学全てをテリトリーとした壮絶なカクレンボだ。
必死で隠れる学園レンジャー、それを血眼で捜す客一同。
まさに、サバイバル。まさに、アクティブ。
こんなにアグレッシブなイベントを考えた人間はノーベル平和賞だ。
などと言うポジティブな考えは全く持たず、聞き流す程度に聞いていた。
そして、オープニングも終わりそそくさと体育館を出た時だった。
グリーンレンジャーとイエローレンジャーとピンクレンジャーだ!
しょっぱなからいすぎ。
「よし、この広い校内から5人全員、絶対探し出すぞ!」
などと勇んで出ていった者にはどう写っただろうか。
やる気なさげに仲良く並んで鎮座するグリーンとイエロー。
3M先で中腰でスタンプを押す豊満なバストを揺さぶるピンク(男)。
まぁ、こんなこともあるだろうと思い、スタンプを3つ貰った。
開始1分、スタンプあと2つ。
その後、体育館を出て校内に入っていった。
レッド発見。
どっしりと構え、スタンプ片手に待機していた。
さすがリーダーの風格、あなどれないぜ。
とにもかくにもこれで開始早々スタンプは4つ。
「ブルー存在薄そうだから、のすごく難しいのかもしれない。」
などと、ゲーム性の向上論などを語り合いながら歩いていた。
「ブルーなかなかいないなぁ」「なぁ」
「ってか、これ5個あつめt・・」「あ、いた」
二手に分かれたT字路を左に曲がる時だった。
普通にブルーがいた。
さも、「急いでるんで・・」的なオーラを出しつつ、歩いていた。
そんな大人気無いブルーから半ば強引にスタンプを頂く。
これで5個。なんともあっけない。
景品を貰いに交換所へ行く。
くじを引かされ、学園レンジャーステッカーなる粋な物を頂いた。
「冷蔵庫にでも貼ってください」
的確なアドバイスも頂いた。
正義の味方学園レンジャーは逃げも隠れもしないのだ。
だから、簡単に見つかって当たり前である。
このイベントは学園レンジャーの勇気を過小評価する者達への布告だ。
学園レンジャーが守っている物は、僕達の笑顔だと言う事。
そんなメッセージがステッカーを通し伝わってきた。
「学園レンジャーの居場所情報をここに書こう」
などと言う掲示板を見つけた。
皆にもこのメッセージが伝わって欲しい。
書こうとする右手を止める事はしなかった。
「大体1階にいますよ。」
逃げも隠れもしないレンジャーの勇気に乾杯。
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