酔っ払いというものは、なかなかどうしてたちが悪い。
あれは1日が終わる頃、11時半だっただろうか。
送別会だかがあったらしく、酔っ払った父親が帰ってきた。
アパートのドアを勇ましく豪快に開け、室内に侵入してくる。
玄関を開けすぐの所にいた僕は、そちらに目を向ける。
少し間をあけ、父親が大きな口を開いた。
「おーーーい!!肉まん買ってきたぞぉぉぉぉぉ!!!!」
さも肉まんがお宝にでもなったかのような物言いで、叫ぶ叫ぶ叫ぶ。
僕ら家族はアパートの一室で生活している。
今年から大学生になった僕は、まだ住んで半年だが、共同住宅の心得というものは、ある程度把握できている。
ましてや、この勇ましい大声をあげている父親は、もう4年目だ。
こんな深夜に、大声で肉まん買ってきたなどと報告していいはずはない。
にもかかわらず、この勇ましい雄たけび。
そう、酔っ払いだ。
会社の付き合いだろうか、良い感じに出来上がってるみたいだった。
こうゆう時は、何かとつけて叱る叱る叱る。
泣き上戸だかなんだか知らないが、過去にこんなことがあった。
実家での事だが、兄の携帯料金が4000円だった月。
携帯を買い与えて貰ったばかりの僕らは、
「3000円以内に抑えろ」
などと鬼のような命令を受けていた。
それなのに、兄の携帯料金が2ヶ月目で4000円を越えてしまう。
その請求書を酔っ払って帰ってきた父親に見られ、
「もう、お前がわかんねぇよぉぉぉぉ!!!」
などと大声で深夜に説教されていた。
その時は、他人事だったので、適当に聞き流していた。
が、今日の標的は自分だった。
台所の方へ行ったと思うと、突如激昂しだした。
酔いどれ「おい、台所はしっかり拭いとけって言ってるだろ!!」
総統「あ、拭いとくわ」
酔いどれ「お前はだから・・(中略)・・わかったのか!?」
総統「おう!わかった!」
酔いどれ「わかったじゃねーんだよ!!!」
総統「えぇぇぇ」
酔いどれ「お前は返事だけなんだよ、お前は返事だけなんだよ!!!」
総統「これから気をつける。」
酔いどれ「行動で示せよ、行動で示してみろよ!!」
総統「わかった。」(台所を拭きに行こうとする)
酔いどれ「わかったじゃねーんだよ!!!」
総統「いやいや、だったらこの場はなんて言えばいいんだ。」
酔いどれ「うるせぇ屁理屈言うな!!」
総統「・・・・」
酔いどれ「お前、おやじを無視すんのか?うん?」
総統「いや、沈黙が正解かと思って」
酔いどれ「お前はな・・(中略)・・わかったのか!?」
総統「完全に把握した。」
酔いどれ「そうか」
総統「言葉を変えればいいんか」
酔いどれ「・・・・屁も出んわ」
そこで会話は終わった。
最後のセリフに多少の違和感を感じたが、割愛。
その後、父は糸が切れたように眠りについた。
しばらくすると、ものすごい屁が聞こえてきた。
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